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研究プロジェクト 2014年度

A「女性専門職の過去・現在・未来」

武田政明・吉田恵子・細野はるみ・平川景子・長沼秀明・岡山礼子
 人は、だれでもがその能力と希望に応じて、その選択した職業を通じて、自己実現をはかり社会貢献をする。そのことによって、社会は、安定的に維持され発展の継続がなされる。したがって、職業の選択と遂行の場面において、必要な能力の獲得と自由な選択意思および円滑な遂行を阻害する要因となるものの分析は、きわめて重要である。このことは、現在でも数々の点で克服できていない女性の職業選択の自由および職業継続・遂行の阻害要因を根源的なところから除去する解決手段を考える際にも同様である。本研究は、かつては、女性が選択することができなかった、いわゆる女性専門職に注目し、女性がその専門職に就くために克服していった過程を、それぞれの時代ごとに、政治、経済、文化的背景等を十分に踏まえて総合的に研究する。

B「企業における女性の活躍推進に関する調査研究」

牛尾奈緒美
 企業内の女性の活躍を促進することは、経営戦略上ますます重要な課題となってきている。しかし、その実現のためには多くの乗り越えるべき障害があり、組織文化の改革はもとより、人事制度の改革と適正な運用に向けての実践的対応など難題が山積している。本プロジェクトでは、これらの問題解決とITの効果的利用との接点について調査・研究を行っていく。また、女性社員の就業意識などについても調査を行っていきたい。

C「戦後ドイツにおける『公共性』とジェンダー」

出口剛司・宮本真也・水戸部由枝
 ドイツの社会理論家J.ハーバーマスの「公共性」概念は、「68年運動(学生運動)」と密接にかかわって発展し、今日、市民社会論や社会運動論の文脈で極めて重要な意義をもっている。では、同時代の「新しい女性運動(第二波フェミニズム運動)」は、「68年運動」の意義やその「公共性」概念をどのように解釈したのだろうか。本プロジェクトでは、1960年代~70年代に展開された「公共性」をめぐる議論を、当時女性運動が掲げたスローガン「個人的なものは政治的なもの(The Personal is the Political)」と摺合せつつ、ドイツ・ジェンダー史研究の視点から捉えなおす。そのことによって「公的なもの」と「私的なもの」のボーダレスの可能性と限界を明らかにしていく。

D「後期近代におけるジェンダー規範の変容と持続」

田中洋美・石田沙織・他
 近代化の過程で形成された伝統的なジェンダー規範は、後期近代とされる現代社会においてもジェンダー関係の社会構造を根底から支える、いわば通奏低音のような役割を担っている。本プロジェクトでは、伝統的ジェンダー規範の変容に関わる女性の集合行為を考察する。今年度は二つの集合行為を取り上げる。反DV政策形成過程における女性の集合行為とメディア空間に見られる女性コミュニティである。後者では、腐女子やLOHAS志向の女性(例えばヨギーニ)といった集団のオーディエンス分析を行う予定である。いずれの事例においても、これまでに一定のデータを収集しているため、今年度は入手済みデータの整理と分析ならびに必要に応じて新たなデータの収集・分析を行っていく。 

E「性別二元制を攪乱する女性アスリートの新聞報道分析」

高峰修・田中洋美
 スポーツ、特に競技スポーツの領域は、女性と男性を明確に区分して競技を行う性別二元制に基づいて成り立っている。女性と男性を区分する方法としては性別確認検査があり、一時期、オリンピック大会に出場する女性選手に適用されていた。時としてその性別二元制では区分されない競技者が登場する。最近では南アフリカの陸上競技選手であるセメンヤ選手や、韓国のサッカープレイヤーであるパク・ウンソン選手を挙げることができる。本プロジェクトでは、競技スポーツ界の性別二元制を攪乱してきた国内外の事例に着目し、そうした事例を国内メディアがどのように取り上げ報じてきたかを明らかにする。国内メディアは大手新聞三紙とし、対象期間は性別確認検査がオリンピック大会に導入された1968年から現代までとする。 

F「資本主義的近代化における不平等の編成」

宮本真也・出口剛司
 社会の進展を言い表す表現としての近代化(モダニティ)は、現在、まず第一に西洋的モデルにしたがってのみ語ることができないとされ、それぞれの社会、地域で見られる近代化のありようは、さらに細分化できる諸要素の編成であると言える。それぞれの近代化の特徴は、この編成のあり方によって差異をなしている。こうした選択的な近代という考え方を受け入れるにしても、多様な編成のなかでも広く現代社会において見いだせるものとして指摘できるのが、資本主義的近代化というあり方であるのだが、本研究においてはこのダイナミズムを特に象徴的な正当化秩序という観点から分析を加えたい。