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研究プロジェクト 2013年度

A「女性専門職の過去・現在・未来」

吉田恵子・細野はるみ・武田政明・平川景子・長沼秀明・岡山礼子
 近年わが国でも男女共同参画をめざす様々な政策が打ち出されるようになった。にもかかわらず、女性の社会参画は、必ずしも進んでいるとはいえない。本研究「『女性専門職』の過去・現在・未来」は、「女性専門職」に注目してその歴史をさかのぼり、その形成・発展過程を社会的・政治的・思想的状況の中で明らかにして、現在にも通底する女性の社会進出をめぐる問題点を分析することを目的としている。まず、女性専門職のパイオニアたる医療職と法曹職を対象とする。医療については医師と看護師、法曹においては弁護士を取り上げ、これらの職業が女性の職業として開かれ、あるいは専門職として確立していく過程を探ることで、女性専門職がもつジェンダー視点での問題点の根源を探っていく。

B「女性の管理職登用の促進についての研究」

牛尾奈緒美
 日本企業における女性の管理職比率の低迷は、男女雇用機会均等法の施行後30年近くたつ今日でもほとんど変わらず、改善の兆しが見えない状況にある。その一方、女性の労働力率の上昇や高学歴化、また、従来、家計の主たる担い手とされてきた男性の所得の低下に伴い、女性の就労が相対的に大きな経済的意味をもつようになってきた。また、企業にとっても、女性社員を基幹的な労働力として位置づけ彼女らのさらなる能力発揮の促進を図ることで、業績向上がもたらされるという認識が広がりつつある。本研究では、女性の戦力化や積極的な管理職登用を行う先進企業に対してインタビュー調査を行い、それらの企業に共通にみられる成功要因について考察するとともに、今後の女性管理職登用の推進に必要となる課題について検討を行っていく。

C「戦後ドイツにおける公共性とジェンダー」

出口剛司・水戸部由枝・田中洋美
 J.ハーバーマスの「公共性」概念は、「68年運動(学生運動)」と密接にかかわって発展し、今日、市民社会論や社会運動論の文脈で極めて重要な意義をもっている。では、同時代の「新しい女性運動(第二波フェミニズム運動)」は、「68年運動」の意義やその公共性概念をどのように解釈したのだろうか。本プロジェクトでは、60年代~70年代に展開された「公共性」をめぐる議論を、当時女性運動が掲げたスローガン「個人的なものは政治的なもの(The Personal is the Political)」と摺合せつつ、ドイツ・ジェンダー史研究の視点から捉えなおすことによって、公私のボーダレスの可能性と限界を明らかにすることをめざす。

D「後期近代における個人化とジェンダー変容」

田中洋美・他
 本研究は,近年の社会変動についてジェンダーの視点から考察するものである。特に性別分業に基づくジェンダー規範が人びとの生き方に大きな影響を与えてきたことを踏まえ、ライフコースの個人化や脱標準化がどのように起きており,それがジェンダー規範や性別分業の意識・実態の変化ないし持続とどう関連しているのかを検討し,個人の生き方の「脱ジェンダー化」がどこまで進んでいるのかどうか明らかにする。

E「東アジアにおける世代間関係と家族形成(結婚や出産)との関連」

施利平・他
 東アジアの日本、韓国と中国はともに晩婚化と少子化に直面し、家族形成が困難な状況にある。これらの国々の晩婚化と少子化の原因として、強い家族主義的な価値観とジェンダー的不平等(中国の場合は異なるが)をあげられる。ジェンダー役割に関しては女性の家庭役割の重視、カップル関係よりは親子関係の優先、さらに家族・親族による相互扶助の原理が強固であることが家族主義的価値観の強い国々の特徴である。家族主義的価値観が女性の社会進出を妨げる一方、家族の形成(結婚、出産)を困難にしているとこれまでの研究でたびたび指摘されてきた。本研究では家族主義と世代間関係、家族形成との関連を概観したうえで、世代間関係がそれぞれ子世代の家族形成(結婚と出産)に及ぼす影響を事例研究と計量研究から明らかにする。