2015年度実施分特別講義・上映会の成果につきましては『ジェンダーセンター年次報告書2015年度』(2016年3月31日発行)からもご覧になれます。(PDFデータにリンク)
映画“PHD Movie 1&2”上映会
【映画概説】北米の大学院生たちの日常をコミカルに描き、院生たちから熱烈に支持された“PHD COMICS”の実写版映画。映画版でも、主人公セシリア(女性)とウィンストン(男性)ら大学院生の日常や悩みが、コメディタッチながらもリアルに描かれ、映画を観た大学院生からは「こんなこと確かにあるなあ」「この状況わかる」という共感の声が寄せられた。主人公たちの姿から、男女両方が直面するアカデミックキャリアの道程のさまざま問題について笑いを交えながら考えさせてくれる内容となっている。
報 告:平田佐智子(明治大学研究・知財戦略推進員)
2015年11月27日に、PHD MOVIE 1&2の映画上映会を行った。本報告では、PHD MOVIEの概要ならびに上映会の様子、また上映会の参加者の感想を紹介する。
PHD COMICSという、大学業界を面白おかしく描いた英語の4コマ漫画を知っているかもしれない。北米の大学院を舞台として、そこに在籍する理系の大学院生やポスドク、教授陣たちの「アカデミアあるある」を題材としたコミックである。セリフなどはすべて英語だが、その内容は言語を超えて共感できるものである。アカデミアの中でも、特に理系分野では知名度が高く、主にTwitterなどのSNSで頻繁にシェアされている。作者のJorge Cham自身も物理学の学位を持っており、MITでポスドクをした経験がある。その後独立してPHD COMICSを始めとしたアカデミア支援活動を行っている。
そのJorgeが脚本を書いた、PHD COMICSの実写映画とも言える作品がPHD MOVIEである。漫画の中で繰り広げられた問答やネタが映画の随所にちりばめられている。2015年12月現在、2つの作品が公開されており、無印(前作)は2012年に公開され、新作(PHD MOVIE 2)はKickstarterで制作のためのファンドが募られ、2015年秋に公開された。
ポスドクである企画者はたまたまPHD MOVIE 2のクラウドファンディングに出資し、いち早くこれらの映画を観る機会があった。本作品は研究に携わるすべての人々を勇気づけることができると感じ、ジェンダーセンターに依頼し上映会を行うに至った。なお、前作は過去に多くの国内大学でも上映が行われているが、新作(PHD MOVIE 2)は公開されて間もないこともあり、本上映会が本邦初公開となった。
上映会は前半と後半に分かれており、前半ではPHD MOVIE 1を日本語字幕付きで上映した。休憩を挟んで後半ではPHD MOVIE 2を字幕無しの状態で上映した。前半が字幕付きだったこともあり、後半の字幕無しバージョンはやや聞き取りが難しいとの感想があった。字幕は制作側が作成する物ではなく、ボランティアによる翻訳作業によるものであるため、新作の翻訳作業が企画されることを期待したい。
【PHD MOVIE 1のあらすじ】
舞台は北米のとある大学。その大学に在籍する二人の大学院生のエピソードが並行して綴られる。大学院生のセシリアはTAに意欲的に取り組んでいるのだが、学生達のやる気はなく、指導教授にも振り回される日々が続く。唯一の楽しみは放課後のダンス活動だが、TAの仕事が忙しくなかなか行けない。高校時代の同級生が順調にキャリアアップしている姿を見て、自分はなぜまだ大学院にいるのだろう、と自問する。もう一人の主役は名も無き男子学生で、PhDを取るため入れるラボを探している。どこもあまり良い対応をしてくれない中、ひとつだけ「ラボの手伝いをして結果が出せれば入ってもよい」ラボが見つかり、早速手伝いを始める。ラボの機械がうまく扱えないまま期日であるシンポジウムは迫り、焦りだけが募る彼は、ミスで機械を壊してしまう。途方にくれる彼にラボメンバーが発した一言で、彼はまた走り出す。
●頂いた感想
・普段あまり我々が知ることのないアカデミックな話が、面白く表現されていました。院生の生活や勉強、そしてこれからの道が、やはり「普通」の人とちょっと違い、面白いこともあり、つらい側面があることがわかりました。
・とてもリアリティを感じました。帰って研究します。
・今まで全く知らなかったPhDについて、ポップなタッチで描かれていて、勉強になりました。
【PHD MOVIE 2のあらすじ】
舞台は前回と同じ北米の大学。セシリアは博士論文を提出してもよいことを指導教授から告げられるが、審査会までほとんど時間がないことも知らされる。審査員の予定を必死で調整し、猛スピードで論文を書き始めるセシリア。前回は名も無き学生であったウィンストンは、初めての国際学会に参加することになった。経費節約のためラボの教授と同室になってしまう、また発表するデータの解釈がうまくいかない、など不安要素が多い中、学会会場に到着する。そこには、所属するラボとファンドを取り合う他大学のラボメンバーがいた。ボス同士の喧嘩に発表を邪魔される先輩を見て、ひどく心配になるウィンストンを、謎の年配参加者が励ましてくれる。果たして彼は無事学会発表を終えることができるのだろうか?
●頂いた感想
・1よりもドキドキする内容でした。学会発表のシーンはまさにツボです。博論公聴会も生々しかったです。エンディングは感動でした。生田キャンパスで是非上映会を!!
・主人公が最後まで頑張って、自信を持って卒業できたシーンが非常に感動しました。
開催日時が金曜の夜ということもあり、あまり参加者が集まらなかったが、頂いた感想には好意的なものが多かった。また、参加者に感想にもあるとおり、開催地の適合性を再考する必要があると考える。本作品は物理学や理学を中心とした、理系の大学院生を扱っていたことから、文系学生が多く集う駿河台キャンパスではなく、生田キャンパスなどで上映を行うことで、興味のある学生がより足を運びやすくなったのではないか。今後生田キャンパスでの上映が実現することを願っている。
また、個人的には、新作であるPHD MOVIE 2が「資金競争や学内の理不尽なシステムに負けることなく、研究を行う」ために、アカデミアにおける若手が、ベテランが、そして年長者がどのように振る舞うべきか、ということを端的に示した作品であると感じたため、学生・院生だけでなく多くの教職員の方々にも、是非観てもらいたいと思う。
最後にこの場を借りて、本上映会開催にあたり大変お世話になった田中洋美先生、細野はるみ先生、岩崎美香氏、横井淳子氏、関谷美由貴氏、そして上映会に参加して下さった皆様に深く感謝する。
PHD COMICSという、大学業界を面白おかしく描いた英語の4コマ漫画を知っているかもしれない。北米の大学院を舞台として、そこに在籍する理系の大学院生やポスドク、教授陣たちの「アカデミアあるある」を題材としたコミックである。セリフなどはすべて英語だが、その内容は言語を超えて共感できるものである。アカデミアの中でも、特に理系分野では知名度が高く、主にTwitterなどのSNSで頻繁にシェアされている。作者のJorge Cham自身も物理学の学位を持っており、MITでポスドクをした経験がある。その後独立してPHD COMICSを始めとしたアカデミア支援活動を行っている。
そのJorgeが脚本を書いた、PHD COMICSの実写映画とも言える作品がPHD MOVIEである。漫画の中で繰り広げられた問答やネタが映画の随所にちりばめられている。2015年12月現在、2つの作品が公開されており、無印(前作)は2012年に公開され、新作(PHD MOVIE 2)はKickstarterで制作のためのファンドが募られ、2015年秋に公開された。
ポスドクである企画者はたまたまPHD MOVIE 2のクラウドファンディングに出資し、いち早くこれらの映画を観る機会があった。本作品は研究に携わるすべての人々を勇気づけることができると感じ、ジェンダーセンターに依頼し上映会を行うに至った。なお、前作は過去に多くの国内大学でも上映が行われているが、新作(PHD MOVIE 2)は公開されて間もないこともあり、本上映会が本邦初公開となった。
上映会は前半と後半に分かれており、前半ではPHD MOVIE 1を日本語字幕付きで上映した。休憩を挟んで後半ではPHD MOVIE 2を字幕無しの状態で上映した。前半が字幕付きだったこともあり、後半の字幕無しバージョンはやや聞き取りが難しいとの感想があった。字幕は制作側が作成する物ではなく、ボランティアによる翻訳作業によるものであるため、新作の翻訳作業が企画されることを期待したい。
【PHD MOVIE 1のあらすじ】
舞台は北米のとある大学。その大学に在籍する二人の大学院生のエピソードが並行して綴られる。大学院生のセシリアはTAに意欲的に取り組んでいるのだが、学生達のやる気はなく、指導教授にも振り回される日々が続く。唯一の楽しみは放課後のダンス活動だが、TAの仕事が忙しくなかなか行けない。高校時代の同級生が順調にキャリアアップしている姿を見て、自分はなぜまだ大学院にいるのだろう、と自問する。もう一人の主役は名も無き男子学生で、PhDを取るため入れるラボを探している。どこもあまり良い対応をしてくれない中、ひとつだけ「ラボの手伝いをして結果が出せれば入ってもよい」ラボが見つかり、早速手伝いを始める。ラボの機械がうまく扱えないまま期日であるシンポジウムは迫り、焦りだけが募る彼は、ミスで機械を壊してしまう。途方にくれる彼にラボメンバーが発した一言で、彼はまた走り出す。
●頂いた感想
・普段あまり我々が知ることのないアカデミックな話が、面白く表現されていました。院生の生活や勉強、そしてこれからの道が、やはり「普通」の人とちょっと違い、面白いこともあり、つらい側面があることがわかりました。
・とてもリアリティを感じました。帰って研究します。
・今まで全く知らなかったPhDについて、ポップなタッチで描かれていて、勉強になりました。
【PHD MOVIE 2のあらすじ】
舞台は前回と同じ北米の大学。セシリアは博士論文を提出してもよいことを指導教授から告げられるが、審査会までほとんど時間がないことも知らされる。審査員の予定を必死で調整し、猛スピードで論文を書き始めるセシリア。前回は名も無き学生であったウィンストンは、初めての国際学会に参加することになった。経費節約のためラボの教授と同室になってしまう、また発表するデータの解釈がうまくいかない、など不安要素が多い中、学会会場に到着する。そこには、所属するラボとファンドを取り合う他大学のラボメンバーがいた。ボス同士の喧嘩に発表を邪魔される先輩を見て、ひどく心配になるウィンストンを、謎の年配参加者が励ましてくれる。果たして彼は無事学会発表を終えることができるのだろうか?
●頂いた感想
・1よりもドキドキする内容でした。学会発表のシーンはまさにツボです。博論公聴会も生々しかったです。エンディングは感動でした。生田キャンパスで是非上映会を!!
・主人公が最後まで頑張って、自信を持って卒業できたシーンが非常に感動しました。
開催日時が金曜の夜ということもあり、あまり参加者が集まらなかったが、頂いた感想には好意的なものが多かった。また、参加者に感想にもあるとおり、開催地の適合性を再考する必要があると考える。本作品は物理学や理学を中心とした、理系の大学院生を扱っていたことから、文系学生が多く集う駿河台キャンパスではなく、生田キャンパスなどで上映を行うことで、興味のある学生がより足を運びやすくなったのではないか。今後生田キャンパスでの上映が実現することを願っている。
また、個人的には、新作であるPHD MOVIE 2が「資金競争や学内の理不尽なシステムに負けることなく、研究を行う」ために、アカデミアにおける若手が、ベテランが、そして年長者がどのように振る舞うべきか、ということを端的に示した作品であると感じたため、学生・院生だけでなく多くの教職員の方々にも、是非観てもらいたいと思う。
最後にこの場を借りて、本上映会開催にあたり大変お世話になった田中洋美先生、細野はるみ先生、岩崎美香氏、横井淳子氏、関谷美由貴氏、そして上映会に参加して下さった皆様に深く感謝する。