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2019年度 開設10周年記念シンポジウム:パート2

2019年度 開設10周年記念シンポジウム(日本):パート2

10th Anniversary Symposium of Gender Center "Diversity and Creativity in the 21st Century: New Directions in Science, Art, and Fashion Part 1. New Directions in Gender Studies: The Past Decade and the Future"

概要



10th Anniversary Symposium of Gender Center
"Diversity and Creativity in the 21st Century: New Directions in Science, Art, and Fashion Part 2. Diversity and Creativity in the Digital Society: New Directions in Art and Fashion"
(ジェンダーセンター10周年記念シンポジウム
 「21世紀の多様性と創造性——学術・アート・ファッションにおける新展開 パート2:デジタル社会の多様性と創造性——アートとファッションの新展開」)

Meiji University, Japan (開催地:日本・明治大学)
November 14-15, 2019 (開催日:2019年11月14日~15日)

プログラム

【主催】明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター
【共催】明治大学大学院情報コミュニケーション研究科
【後援】明治大学国際連携本部
【協力】明治大学特定課題研究ユニットジェンダー・セクシュアリティ研究ネットワーク
【会場】明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント1階グローバルホール

【日程とプログラム:1日目】
オープニングセッション:デジタル社会の多要性と創造性
Diversity and Creativity in the Digital Society
2019年11月14日(木)18:30~20:30(開場18:00)

18:30 開会,挨拶,趣旨説明
 大黒 岳彦(明治大学情報コミュニケーション学部長)
 須田 努(明治大学大学院情報コミュニケーション研究科長)
 田中 洋美(明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター長)
18:45-19:00   基調講演1「人間以外の死をめぐるテクノロジー」
 …渋谷 慶一郎(アーティスト,音楽家)
19:00-19:15 基調講演2「メディア論とアートの変容」
 …大黒 岳彦(明治大学教授)
19:15-20:30 座談会:
 渋谷 慶一郎(アーティスト,音楽家)
 大黒 岳彦(明治大学教授)
 四方 幸子(キュレーター,多摩美術大学客員教授・東京造形大学客員教授)
 司会:田中 洋美(明治大学准教授)

【日程とプログラム:2日目】
アートとファッションの新展開
New Directions in Art and Fashion 
11月15日(金)17:00~21:10(開場16:30)

17:00 2日目挨拶
 土屋 恵一郎(明治大学学長)
17:05-19:20 パネルセッションⅠ:生命・身体・社会へ——境界を問うアートの新地平
 Panel SessionⅠ: Life, Body, Society: New Frontiers of Arts interrogating Boundaries
登壇者:
 森永 邦彦(ANREALAGE〈アンリアレイジ〉デザイナー)
 シャルロッテ・クロレッケ(南デンマーク大学教授)
 岩崎 秀雄(早稲田大学教授,アーティスト)
 シュー・リー・チェン(メディアアーティスト,映像作家)
 司会:四方 幸子(キュレーター,多摩美術大学客員教授,東京造形大学客員教授)
 ※登壇順
19:20-19:30 休憩
19:30-21:10 パネルセッションⅡ:日常,アイデンティティ,メディア——境界を問うファッションの新地平
 Panel SessionⅡ: Daily Life, Identity, Media: New Frontiers of Fashion Interrogating Boundaries
登壇者:
 アニエス・ロカモラ(英ロンドン芸術大学教授)
 小石 祐介(クリエイティブディレクター,KLEINSTEIN代表)
 門傳 昌章(豪西オーストラリア大学講師)
 司会:高馬 京子(明治大学准教授)
 ※登壇順
21:10 閉会

パート2 デジタル社会の多様性と創造性——アートとファッションの新展開:パネルセッション(アート)

報 告:四方 幸子(キュレーター,多摩美術大学客員教授,東京造形大学客員教授)
「生命・身体・社会へ——境界を問うアートの新地平」と題した本セッションは,科学技術の飛躍的進展と日常への浸透によって表現を拡張するアートの最前線と,ジェンダー研究における実践をともなう領域の拡張が,近年接点を生み出している状況を未来に向けて確認する場となった。
ファッションの領域で様々な境界の越境に挑戦する森永邦彦(ANREALAGE デザイナー)は,光を当てると色が変化する服(波長を感じる服),目の視えない人が空間との距離を知覚できるセンサー搭載の「echo wear」(身体器官としての洋服),生分解される服などを実物を含めて紹介,「Umwelt(環世界)」(ユクスキュル)を挙げながら,異なる知覚世界,多様性を前提とする姿勢を語った。
シャルロッテ・クロレッケ(南デンマーク大学教授/skype参加)は,「21 世紀のフェミニスト・カルチュラル・スタディーズ」という観点から,人工的な冷却による生や死,若さや老いの再定義,またそれを追求する美や科学技術の果てない欲望を,cryo-art(超低温保存技術)の事例を挙げながら発表した。
岩崎秀雄(早稲田大学教授,アーティスト)は,自身が実践する生命美学やバイオ(メディア)技術の探求においては自然科学と芸術(アルス)がクラインの壺のように互いを包摂(反転)するような関係にあるという考えを提示した。挙げられた3つの事例(研究や制作のための場 MetaPhorest,バイオメディアアート作品 「Culturing <Paper>cut」,先端科学技術研究の背後にある生命性を検討するプロジェクト「aPrayer: 人工細胞・人工生命の慰霊」)は,いずれもアートとサイエンス,理論と実践を往還するものであり,それらを通して岩崎は,クラインの壷の比喩に戻り,「生物は,外的世界を内部表示する活動でもある」と結んだ。
シュー・リー・チェン(メディアアーティスト,映像作家/パリ在住)は,監獄から現代のデジタル監視システムに至るまで,性的主体性が監禁や統制のテクノロジーによって構築されることを批評的に扱う新作メディアアート・ インスタレーション《3x3x6》(ヴェネツィア・ビエンナーレ2020 台湾代表作品)を紹介しながら,ジェンダーとセクシュアリティの問題について述べた。
各発表は,いずれも人間と環境,自然と人工の境界を問い直す視座をもち,現在急速に進行しつつあるデジタルネットワークや生政治,そしてその内面化に対してアートを介して異化を試みるものであった。議論では,環世界や脱人間中心性的な側面で森永と岩崎が,ジェンダーや生政治の側面でクロレッケとチェンが接続されるなど,領域横断的な各自の活動が新たに領域を超えて交差することが確認された。それとともに,アートを現代社会の諸問題を批評的に検討する開かれた場と見なすビジョンが共有された。

パート2 デジタル社会の多様性と創造性——アートとファッションの新展開:パネルセッション(ファッション)

報 告:高馬 京子(明治大学情報コミュニケーション学部准教授)
本セッションでは,ファッション研究の最前線で活躍する3人のパネリスト,ロンドン芸術大学ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのアニエス・ロカモラ氏,クリエイティブディレクター/KLEINSTEINである小石祐介氏,西オーストラリア大学門傳昌章氏とともにデジタル社会におけるファッションをテーマに議論した。まず報告では,アニエス・ロカモラ氏が「#parisienne:パリジェンヌ像にみるソーシャルメディアの階層化」において,ソーシャルメディアにおいて」構築されるパリジェンヌ表象に見られる規範を再生産する装置としてのハッシュタグ(#)とアルゴリズムの役割について,具体的事例で検討し,ファッションのハッシュタグはいかに社会を分類していくのかについて報告した。続いて小石祐介氏は,「離散化する社会と意味の相転移—「正しさ」の変容する時代に」において,社会現象の一部であるファッションを衣服や個の身体の議論ではなく,人の振る舞い+装いの様相として「様装」として捉えることで近年の社会の社会現象としてのファッション(様相)の動きが見えてくるとし,ロラン・バルトのファッション記号論での意図を現代の形で拡張する緒を探る報告を展開した。門傳昌章氏は,「境界の問題:階級,文化とカワイイの逸脱の可能性」において,ファッションから見た階級,年齢,そしてジェンダーの逸脱の可能性について,ファッション学,歴史的視点から,特に,かわいいというコンセプトとファッションモデルという事例を通して,ファッションにおける「逸脱,transgression」について検討した。それらの報告を踏まえ,今日デジタルメディアの発展する高度情報社会において,以下の問い,①ファッションはどのように変容したのか,②今,ファッションを身につけて私たちはなにになろうとする/させられるのか,③ファッションメディアは個人にとって多様な自分らしさを提言するエンパワーメント空間になったのか,④デジタルメディア時代のファッションを論じるためにいかなる方法論,アプローチが有効なのか,⑤現場とアカデミズムの協働はいかに可能なのか等,本テーマに関連する問いについて討論を展開し,アートと異なり,消費,生産,経済といった側面からも大きく条件づけられるデジタル時代の境界を問うファッションの新地平について議論した。