経営学部

フィールドスタディ C (京都:佐々木先生)実施報告

2019年08月08日
明治大学 経営学部事務室

川島織物セルコン                                                                                                                                               川島織物セルコン

オムロン京都太陽株式会社オムロン京都太陽株式会社

島津製作所島津製作所

島津製作所創業記念資料館島津製作所創業記念資料館

実習先: 京都
実習期間: 2019年6月20日(木)~22日(土)
テーマ: 京都企業の歴史と現況を探訪する

【6月20日(木)】
(川島織物セルコン) 
初日の6月20日(木)には、株式会社川島織物セルコンを訪問した。株式会社川島織物セルコンは、創業170年余りを誇る老舗企業で織のトップメーカーである。企画・開発、デザインから製造、販売までを一貫して手掛けており、今回の訪問では、工場と美術館の見学をさせて頂いた。
 まず館内の展示から拝見した。ファッションデザイナーであるFRITZ HANSENとコラボレーションした椅子や、大正時代から明治時代にかけて技術の進歩について説明して頂いた。工場見学では、舞台の緞帳の製作現場を見学させて頂き、川島織物セルコンの緞帳は、綴織りといわれる伝統の手法で織り上げることで最高品質を実現しているとのことだった。同じように見えるが微妙に異なる色の色糸を300〜600色ほど用いて織り上げるという職人さんの伝統とプロフェッショナルを感じる見学であった。今回の見学では、東京のどこかに展示するというも製品の製造現場を見学できるという貴重な時間であった。ちなみに、一人前の職人になるのに少なくとも10年は必要とのこと。また、素材にも力を入れており、ほとんどの糸をバングラディシュやタイ、中国等のポリエステルに移行してきている中、緞帳などは国内産の生糸にこだわって織り上げているとのことだ。
 美術館見学では、現在の上皇陛下が幼少期に生活されていた部屋にあったという織物を見学することができた。館長が上皇陛下とお話しする機会があった時にこの織物の話をしたところ未だに覚えてらっしゃったというお話を聞くことができた。
 最後に川島テキスタイルスクールという職人を育成するものではなく、一般の方に織物を知ってもらうという目的の事業をしていることをうかがった。伝統を守り受け継ぐ努力と、利益を出していくために経費削減などに務めるなど現在の活動についても多くを知ることができた。昔は着るものだけに使われていた織物だが、今や相撲の化粧まわしや、祭礼用、優勝旗等が織物で作られており、これからの時代には織物の多様性が期待される。

【6月21日(金)】
(オムロン京都太陽)
2日目の6月21日(金)、午前中に私達はオムロン京都太陽株式会社を訪問した。同社は社会福祉法人太陽の家とオムロン株式会社の共同出資によって設立されたオムロンの特例子会社である。現在、ソケットやタイマー、センサといった産業機械で使用される製品の中でも特に大量生産が難しい商品を中心に1500機種の製品を生産している。事前学習を通して、従業員の70%が身体障がい者、25%が知的障がい者であることを知り、そのような方々をどのように工場の労働力としているのか非常に興味を持った。
実際に作業工程をひとつひとつ見学させていただき、障がい者に対する作業工程の配慮が細かい所までなされていることがわかった。たとえば、工場は車椅子の方が多くいるため、作業机の高さが一般の工場より低く車椅子に座ったまま作業が出来るようになっている。また、障がいの程度や内容を把握し、ひとりひとりの能力を最大限に引き出せる作業を割り当てるという形を取っていた。さらに、見学を通して、従業員の方々が生き生きと働いているのが伝わってきた。作業者の方に出会うたびに挨拶をして下さり、とても心地よく見学をさせて頂いた。
このように障がいを持った方でも働きたいと思っている人は世の中にたくさんいるので、私達はこれから、障がい者の雇用を増やしていき、障がい者が健常者と同様によりよい生活を送れる社会を作っていくべきだと思った。
(島津製作所本社・三条工場)
6月21日(金)の午後には、株式会社島津製作所の本社・三条工場を訪問した。島津製作所は、分析・計測・医用・航空・産業といった幅広い分野の機器を製造し、科学の力で社会の発展に貢献している会社である。LCMS-8060という分析機器は、世界最高レベルの感度と高速性能を誇り、食品中の残留農薬や混入物の測定など、高精度なデータを出すことができる。われわれの安全な暮らしは、このような技術の発展の上で成り立っているものなのだと改めて感じた。作業をしている方々の多くは、目の前にコンピューターがあって、モニター画面を見ながら仕事をこなしており、情報技術の導入によって生産性の向上を図っている様子が見受けられた。また、コンピューターを用いた作業により、ミスの軽減、さらには違う人による作業でも、同じ製品を作ることができるという利点もあると説明を受けた。また、作業員の方がかぶっている方の帽子の色にも違いがみられた。これは、作業員の方の熟練度により帽子の色が分かれていてためである。このように、作業員の熟練度が可視化できるような工夫が施されている。
工場見学の後は、実際に島津製作所の製品を間近で拝見する機会が設けられた。一番印象深かったのは、乳房専用PET装置である。これは、乳がん検査を受ける際の被験者の負担を少なくし、従来品では痛みのともなうような検査も、ただ装置の上でうつ伏せの姿勢をとるだけで大きな痛みを感じることなく完了するという装置である。このような装置のさらなる普及で、人々の健康への関心を集めることが期待できる。

【6月22日(土)】
(島津製作所創業記念資料館)
3日目6月22日の午前中は、島津製作所創業記念資料館を訪問した。この資料館は京都の木屋町二条に位置し、島津製作所の創業の地である。また木造建築であり、歴史を感じる建物であった。創業者の初代の島津源蔵が居住し、研究所として使用されていたこの建物を保存し公開しているとのことである。
館内を入ってすぐに医療用X線装置である「ダイアナ号」が展示されていた。「ダイアナ号」は透視や撮影などの様々な目的に対応できる装置として圧倒的に当時の市場に受け入れられが、当時X線装置はあまり普及しておらず、医者は被曝をしながらも試行錯誤で診察をしていて、実際に被曝による死亡者も出ていることを知り、衝撃を受けた。そして当時の医者の辛さや苦しみを感じた。医療技術の発達により、現在、患者だけではなく、医者が安心して診察をできるような環境があることにありがたみを感じた。 また医療機器の他に、産業機器などの事業活動に関連する歴史的な文献や資料などが展示されていた。
そして初代島津源蔵や二代目島津源蔵の生い立ちや島津製作所の創業や、今まで製作してきた様々な機器などについてのビデオを見させていただいたり、実際に地図を見ながらの説明を受けたりして、事前学習よりさらに理解を深めることができた。
二階には島津製作所が教育機関に販売していた理科の実験器具が沢山飾られていた。教育機関に向けて実験器具の販売を開始した当時、教育制度が定着していなかったためにあまり売れなかったが、後に日本における理科教育の発展に貢献する大事な役割を果たしてきたということを知った。
そして球体衝突試験器、ストロボスコープなどの実験器具を実際に体験できるコーナーもあり、自ら体験し、触れることによって、その機器の仕組みや原理を理解することができた。
この資料館を訪問し、私達は島津製作所の歩みと日本の近代科学技術の発展過程を理解することができた。

佐々木 聡 専任教授