経営学部

フィールドスタディ A (青森県:居駒先生)実施報告

2019年09月20日
明治大学 経営学部事務室

青森県立郷土館青森県立郷土館

三内丸山縄文遺跡三内丸山縄文遺跡

青森市ねぶた祭り青森市ねぶた祭り

実習先: 青森県青森市
実習期間: 2019年8月4日~6日
テーマ: 青森市の歴史文化基本構想について


目的(実習のねらい):
青森市は平成26年度の1年間に文化庁の歴史文化基本構想に採択され、三内丸山遺跡を中心とする縄文遺跡やねぶた祭りなどの民俗行事の保存と活用に関する策定事業に取り組んだ。この取り組みについて事前学習を重ね、実際にねぶた祭りを見学し、聞き取りなどの現地調査を通して、青森市の地域づくりを実感的に理解することを目的とした。

実習報告:
履修生は1年次3名(男子1、女子2)、3年次5名(男子3名、女子2名)、4年次3名(男子1名、女子2名)の合計11名で、現地調査は8月4日から6日までの2泊3日の日程で実施した。

1日目は午後に青森市に到着した後、まず青森市内めぐりをした。
①青森県立郷土館:青森県と青森市の歴史文化や芸術文化、観光地などの全体的な把握を心がけ、予備知識を身につけた。履修生は自分の調査テーマを重点的に見学し、今後の調査計画の参考にした。
②棟方志功記念館:明治36年生まれで青森市出身の世界的な彫刻家、棟方志功の作品を見学した。生家は記念館のすぐ近くで、善知鳥神社が遊び場だったという。この地の環境が版画の傑作を生む素地となったことを学んだ。訪問客も多く、青森市の重要な観光地になっていることを実感した。
③三内丸山縄文遺跡:大型掘立柱建物や大型竪穴建物の復元を見ながら、広大な敷地に点在する縄文のムラを体感した。青森市は現在、三内丸山遺跡を中心とする縄文遺跡群の世界遺産登録を目指して保存・整備・活用を進めているが、その取り組みの現場を見学することができた。
この市内めぐりでは青森市が観光用に運用するバス「ねぶたん号」を利用した。バスに乗ってみて青森市の観光推進政策の一端を知ることができた。
夜7時からねぶた祭りの見学をした。主に県庁前のメイン会場でねぶたの山車の迫力を体感した。各企業や高校・大学などの団体がねぶた師によって制作されたテーマやデザインを競うのであるが、その洗練された図柄には驚かされた。ねぶた行列は山車だけでなく、大太鼓・笛・鉦の囃子、ハネトと呼ばれる踊り子たちの集団で構成され、町内会や企業の地域一体感を実際に見ることができたことは大きな収穫であった。ホテルは青森市内のすべてが予約済みで、列車で40分離れた野辺地に移動して宿泊した。多くの観光客も近郊のホテルに分散宿泊しているようで、帰りの列車は満席だったことも、ねぶた祭りの人気度を知る機会となった。

2日目は午前中に野辺地から青森市に移動し、青森市の発展史と蝦夷地との関係という歴史文化を知るために善知鳥神社を訪問した。この地は平安時代から北の鎮守として陸奥国の統治、蝦夷地支配の最前線となった。室町時代になると謡曲「善知鳥」が作られ、中央にもよく知られるようになる。善知鳥神社の歴史文化をテーマとする履修生がいて、神社関係者から聞き取りをした。
午後は各自、青森市立図書館で資料収集をした。午後3時から青森市役所教育委員会文化財課文化財保護チームリーダー、児玉大成さんに市役所会議室にて聞き取りをした。履修生11名全員のテーマについて丁寧に専門的立場から回答し、助言してくださった。児玉さんは特に縄文遺跡の世界遺産登録の行政側責任者を務めている関係で、縄文遺跡をテーマとする履修生には現場の最前線の声を聞く貴重な機会となった。ねぶた祭りをテーマにする履修生も、活発な質疑応答を展開し、青森市の観光資源を有効活用する政策について深く理解できた。その夜も前日に続いて、グループに分かれてそれぞれの場所でねぶた行列を見学し、観光客に聞き取りをした。

3日目は午前中に青森市に移動し、各自のテーマに基づいて聞き取り調査を実施した。
履修生のテーマは以下の通り。(レポート提出者は10名)
1、青森市ねぶた祭り  5名
2、三内丸山など縄文遺跡  2名
3、善知鳥神社と青森市  1名
4、青森市の観光産業  1名
5、八甲田山雪中遭難事件資料館  1名
以上、ねぶた祭りを中心として青森市の歴史文化基本構想策定事業やその政策に実際に触れ、現場の地域づくりの考え方や市民参画などについて、聞き取りを通して理解が深まった。

成果:
「青森市の歴史文化基本構想について」というテーマで履修生が学んだことは、伝統的ねぶた祭りを含む文化財を観光に活用し、それをもとに地域活性化政策を推進する活動についてである。地域の特色や歴史文化に市民が誇りを持ち、大切に守っていくことが地域づくりの根幹にあることを理解した。それが今回のフィールドスタディの大きな成果である。


居駒永幸 専任教授