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ジェンダーセンター

ジェンダーセンター共催『「LGBTQ勉強会」って何やるの?〜演劇・映像制作の現場から考える』開催報告

2022年11月02日
明治大学 情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター

2022年7月9日(土)開催
講演会『「LGBTQ勉強会」って何やるの?〜演劇・映像制作の現場から考える』

【講師】和田華子氏(俳優)
【主催】明治大学情報コミュニケーション学部日置貴之研究室
【共催】明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター
【日時】2022年7月9日(土)13:30〜17:00
【会場】明治大学駿河台キャンパス リバティータワー1096教室
【来場者数】68名

【報告】日置貴之(情報コミュニケーション学部准教授)
 講演会「「LGBTQ勉強会」って何やるの?〜演劇・映像制作の現場から考える」は、2022年度春学期に情報コミュニケーション学部で開講した「日本文学」(オンデマンド形式によるメディア授業)の関連企画であり、同科目を担当する日置の研究室主催、ジェンダーセンター共催によって実施した。対象は学内の学生・教職員であり、対面参加のみの催しであったが、少なくない参加者があった。
 「日本文学」の授業では、主に古代から明治時代ごろの日本の演劇・芸能を題材として、さまざまなマイノリティの表象と、マイノリティとされる人々による表象について論じた。マイノリティとは、普遍的な存在ではなく、時代や地域といった要素によって、ある集団や個人が「マイノリティ」であるかどうかは変化する。授業では、歴史的な視点を導入することによって、私たちが持つマイノリティ観を相対化することを目指したが、最終的にはそうした新しい視点から、「現代」を見つめることこそが重要である。
 そこで、現代の日本の演劇とマイノリティとの関係について考えるべく、和田華子氏に話をうかがった。和田氏は、俳優として小劇場演劇を中心に活動するかたわら、2019年から「俳優・劇作家・演出家・制作者に向けたLGBTQ勉強会」を開催している。
 
 講演会の第1部では、和田氏がどのような意図を持って勉強会を始めたのか、また、普段の勉強会ではどのようなことを話しているのかなどをうかがった。和田氏の勉強会は、LGBTQに関する基礎的な知識の提供以上に、創作の現場にいるセクシャルマイノリティはどのような困難を抱えがちで、それに対して周囲の俳優や制作者には何ができるのか、といった具体的な問題を扱っている(正確には、「セクシャルマイノリティ」「LGBTQ」という言葉自体が多様な人々を含むのであり、困難にせよ対応にせよ、均一化できるものではないという点も大事であるし、そうした問題にも和田氏は言及した)。マイノリティにとって重要なのは、漠然とした同情などではなく、社会が正確かつ科学的な知識を持つことである。

 第2部では、日置との対話の形式で現代の演劇や映像作品におけるマイノリティの描かれ方や、マイノリティの表現者を取り巻く環境について考えた。国内外のさまざまな作品に描かれてきたLGBTQ像とその問題点や、近年話題になることの多い、マイノリティの登場人物は当事者が演じるべきかどうかといった問題について考えた。また、和田氏が「日本文学」の講義動画を視聴した上で、過去の事例との比較などをおこなうことができたが、これについてはオンデマンド形式の授業であることの利点が生きたといえる。
 最後に、参加者からの質問を受け付けたが(オンラインの質問用フォームを使用し、匿名でも質問可能な形を取った)、参加者が最近目にした作品のなかのマイノリティの描写に関する具体的な質問や、米国などの映画界では導入が進んでいるインティマシーコーディネーターについて、日本の演劇・映画界の状況を問うものなど、多くの質問が寄せられた。学生だけでなく教職員を含む多くの方が、積極的に講演会に参加した様子からは、改めてLGBTQやジェンダーの問題に対する関心と、正確な知識に対する欲求が非常に高まっていることを感じた

講義をする和田氏講義をする和田氏

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