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2012年度 インド国際シンポジウム

2012年度 ジェンダーフォーラム(インド)

"Asia-Pacific Gender Studies Conference: Gender Equity. Issues of Theory, Practice and Policy in the Asia-Pacific Region"

概要



"Asia-Pacific Gender Studies Conference: Gender Equity. Issues of Theory, Practice and Policy in the Asia-Pacific Region"
(「アジア・太平洋ジェンダー研究国際学会:ジェンダー公正—アジア・太平洋地域における理論、実践、政策—」)

Kumaun University, India(開催地:インド・クマウン大学)
March 21-24, 2013(開催日:2013年3月21日~3月24日)

プログラム

21 March 2013 (Thursday): Panel 1- 10 pm to 1.30 pm:
  Issues and debates in feminist theory and research in the Asia-Pacific
21 March 2013(Thursday): Panel 2- 2.00 pm to 5.00 pm:
  Gender Equity and Development: issues in practice
22 March 2013 (Friday): Panel 3- 10 pm to 1.30 pm:
  Changing policy perspectives and recaliberating governance for achieving Gender Equity and Millenium Development    
  Goals in the Asia-Pacific
22 March 2013 (Friday): Panel 4- 2.00 pm to 5.00 pm:
  Round Table of collaborating Universities on setting up of Gender Research Forum for gender research in the Asia
  -Pacific
23 March 2013 (Saturday):
  Field Trip to study BEST Practices in Indian Gender Empowerment projects
24 March 2013 (Sunday):
  Field Trip to study BEST Practices in Indian Gender Empowerment projects

報告:田中洋美(情報コミュニケーション学部特任講師)

 本センターは2011年度からタイ王国シーナカリンウィロート大学公共経済学部のジェンダー研究者と学術交流を行っている(2011年度年次報告書参照)。2012年度からはこれにインドのクマウン大学が加わり、三つの国の大学の研究者による国際交流が始まった。この交流プログラムの柱となるのがジェンダー・フォーラムの開催である。2013年3月、クマウン大学にて同フォーラムが開催された。タイからは公共経済政策学部の学部長、副学部長をはじめ、教員を中心に8名、日本からは本センター運営委員3名が参加した。
 クマウン大学があるインド・ウッタラカンド州ナイニタルは、ヒマラヤ山麓の湖の多い風光明媚な地域である。現地のジェンダー研究者は、女性の貧困や教育、政治参画の他、環境保護、チベット族をはじめとする少数民族の支援など、さまざまな問題に取り組んでいる。またNGO支援活動もさかんな地域であり、以下に述べるが、滞在中はその様子を視察することができた。
 同フォーラムのコーディネーターを務めたのは、クマウン大学のディヴィヤ・ジョシ准教授(専門は政治学、ジェンダー研究)である。ジョシ博士は、同フォーラムを国際学会として開催した。Asia-Pacific Gender Studies Conference: Gender Equity. Issues of Theory, Practice and Policy in the Asia-Pacific Regionと題された本学会には、タイ、日本だけでなく、デリー大学を始め、インド国内の大学からも多くの研究者が参加した。また本学会はインドの国家女性委員会(National Commission of Women) より助成を受け、同委員会メンバーも会議に出席された。
 二日間に渡り開催された国際学会は、4つのセッションから成り、計21の口頭発表がなされた。各セッションの座長を務めたのは、クマウン大学の研究者の他、チャンドラ・カラ・パディア氏(バンラス・ヒンドゥ大学社会科学部)、ヴィディヤ・ジェイン氏(ラジャスタン大学ガンディー研究センター)といった他大学に所属する研究者であった。とりわけインド国内では著名なジェンダー研究者であるというパディア氏の情熱的な発言に、聴衆は静かに耳を傾けた。
 本学会は、インドの参加者にとっては普段知る機会の少ないタイや日本のジェンダー問題について知り、タイや日本の参加者にとっては現地インドの研究動向について知る貴重な機会となった。各発表後の質疑応答では活溌な議論が展開されたが、発表の内容や方法論についての再検討を促すような批判的なコメントも多くなされた。
 学会ではまた、社会改革のためのアイデアや知識を生み出すことができる研究者がもっと実践に関わる必要があることが繰り返し強調された。そもそも本学会のテーマに「理論・実践・政策(theory, practice, policy)」が掲げられていることの意味を改めて噛み締めることとなったわけであるが、同時に、資本主義のグローバル化が進み、貧困や格差の問題が国家の枠組みを越えて構造化されていく中で、日本を拠点とする研究者はどのような知識を生み出し、どのように実践や政策形成に関わっていくべきかについて考えさせられた。
 今回のフォーラムでは、ヒマラヤ山脈中腹の村で展開されている女性エンパワメントプログラムを視察することもできた。1980年代後半から活動しているChirag (Central Himalayan Rual Action Group)というNGOが支援している村のひとつ、タパリャ・メヘラガオン(Thapaliya Mehragaon)を訪問し、村の住民たちと交流する機会に恵まれた。Chiragは、尊厳、正義、連帯をキーワードに、農村社会の人々の生活の質の向上を目的とする活動を展開し、農業支援、教育支援、水源確保、森林保護活動の推進などの領域ごとにさまざまなプログラムを運営しているという。少女・女性の貧困撲滅やエンパワメントのためのプログラムもあるが、これらには男性村民も一緒に参加しているとのことであった。
 次回フォーラムは、バンコクに拠点を構えるシーナカリンウィロート大学で開催される予定である。インド、タイ、日本という国際的分業の中でそれぞれ立ち位置の異なる国々で活動する者たちによる恊働作業を通して、グローバル時代におけるさまざまな社会問題への各自の関わり方についてより明確なビジョンを描くことができるよう、今後のフォーラムの展開に期待したい。