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田中・内藤合同ゼミ研究発表会「『アナ雪』現象を読み解く!」

概要



【主催】情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター
    情報コミュニケーション学部田中ゼミナール・内藤ゼミナール
【日時】2015年1月21日(水)16:30-19:30
【会場】明治大学駿河台キャンパス リバティタワー2階1021教室

【コーディネーター】田中洋美氏(情報コミュニケーション学部准教授)
         内藤まりこ氏(情報コミュニケーション学部専任講師)
【コメンテーター】生方智子氏(明治大学文学部准教授)
         出口剛司氏(東京大学文学部准教授)
【発表者】情報コミュニケーション学部 田中・内藤合同ゼミナール受講生

【プログラム】
第1部:メディアテクストとしての『アナ雪』〜物語分析、表象分析
第2部:『アナ雪』ブームを探る〜映画と主題歌のオーディエンス分析
第3部:討論・質疑応答
報告:小林 雅人・吉田 萌(情報コミュニケーション学部3年)
公開以来日本において大ブームとなった米ディズニー映画『アナと雪の女王』(以下『アナ雪』)。その実態を探るべく田中・内藤合同ゼミによる研究が行われた。本合同ゼミでは物語分析、表象分析、映画ブーム分析、主題化ブーム分析を行うべく、4つの班に分かれて調査・研究・発表を行った。そして研究発表会をジェンダーセンターの特別イベントとして実施する運びとなった。

発表会は三部構成で企画され、まず第1部、物語分析班の発表から始まった。同班は今までのディズニープリンセス作品と『アナ雪』を比較し、ナレーションの有無から『アナ雪』は物語を現在進行している出来事として描く工夫がなされていたことを明らかにした。構造分析では、王道的な見方による本作品の主人公はアナであること解き明かした。記号論的分析では、アナとエルサの所属する場の違いを明らかにした。イデオロギー分析では、「真実の愛」という言葉の持つイデオロギーについて明らかにし、物語の新たな可能性を示した。

続く表象分析班は、モブに映し出された性別分業や社会的上下関係の存在を示した。さらに、エルサとモブの関係性が、エルサの魔法という「差異」による影響を受けていることを明らかにした。また、主要な男性登場人物であるハンスとクリストフの表象から“完璧な「王子」の不在”を主張した。さらに、メインヒロインであるアナとエルサは対照的なダブルヒロインであることを明らかにした。アナと男性登場人物との関係についても、女性のアナが自立できていない存在として描かれていることを示した。

この結果から、登場人物が典型的な男らしさ、あるいは女らしさを持った人物として表象されつつ、従来のジェンダー秩序の枠にとらわれない表象もみられると述べられた。

第2部では、オーディエンスに関する研究を取り上げた。映画ブーム班は、『アナ雪』がいかにしてヒットしたのかを明らかにするため、データ収集・分析を実施した。結果として次の三点について発表した。第一に、定番と意外性の併存である。ディズニー作品の定番を「わかりやすさ」や「ハッピーエンド」であるとし、かつ「王子と結ばれない」、「王子の裏切り」といった意外性も同時に存在していると述べた。第二に、歌の優位性である。今回の調査ではオーディエンスが『アナ雪』の魅力を歌に見いだす傾向が強く認められた。以上から、定番と意外性を兼ね備えた物語と劇中歌の魅力の相互作用により「嫌い」を生ませなかったのではないかとの主張がなされた。第三に、消極的好感である。映画ブーム分析班は、調査の結果オーディエンスが作中全ての要素に好感を持っているのではないと指摘した。これらの分析結果から、映画ブーム分析班は主要メディア言説と今回の分析結果のズレや、ディズニー作品の王道パターンに対する視聴者の受動的視聴を批判的に論じた。

次に主題歌ブーム分析班による「Let It Go」ブームに関する研究発表が行われた。ここでは四つの分析結果が呈示された。第一に、主題歌のコモン・ミュージック化である。小泉恭子氏(『鳴り響く<性>ポピュラー音楽とジェンダー』勁草書房,1999年,p32~57)によれば、コモン・ミュージックとは同年代が盛りあがって歌える楽曲を指す。今回の調査では「Let It Go」がコモン・ミュージックの特徴を持っていることがわかった。第二に、メロディの優位性である。第三に、映像を介する曲の印象化、つまり「曲と映像の相乗効果」の存在である。そして最後に、TVを中心とするメディア戦略を挙げ、未だにTVがブームに大きな影響をもたらしていることを主張した。以上の分析結果から、オーディエンスが歌詞の意味を理解せずに楽曲を消化した結果、歌詞の重要性が薄れたのではないかという論点が導き出された。また、「Let It Go」はメディアの垂れ流しによりコモン・ミュージックとなったのではないかとも主張した。

四つの発表の後、第3部ではコメンテーターの生方智子先生と出口剛司先生からコメントをいただいた。生方先生は、物語分析班に対して、それぞれの分析で得た結果を元に全体的な解釈へと踏み込むと面白いのではないかとアドバイスをした。また、人間社会と雪山との関係は固定的ではなく、より入り組んでいるのではないかといった見方も提示した。出口先生は、表象分析についてアナの特性に関して男性的な部分の存在も指定できないことを指摘するとともに、エルサの変化の捉え方を評価するコメントを頂いた。また映画ブームと主題歌ブームについては、消極的好感とコモン・ミュージック化に関して他作品と比較し『アナ雪』独特の特徴を見つけ出せると良いのではないかとのアドバイスを頂いた。

学生主体でこのようなイベントを開催することは私たちにとって初めての経験であったため試行錯誤することも多かったが、研究も発表会の準備も非常に良い刺激となった。今回の経験を元に、今後の活動を充実させていきたい。

発表の様子

会場の様子

出口剛司氏

生方智子氏

ジェンダーセンター