生命を形づくる「化学の波」を材料の電荷で操る
— 化学信号を自在に制御する新しいソフトマテリアルへ —
明治大学理工学部応用化学科の李ウォンソク助教(筆頭著者・責任著者)は、同学科の深澤倫子教授とともに、ハイドロゲルが持つ電荷を利用して、化学反応の「波」の伝わり方を制御できることを明らかにしました。本研究成果は、米国化学会が刊行する国際学術誌「ACS Materials Letters」(5-Year Impact Factor 9.1)に掲載されました。
生体内では、化学物質や電気信号が波のように広がることで、細胞同士の情報伝達や、発生・形態形成を含むさまざまな生命現象が生み出されています。こうした「波」は、生命が自ら情報を伝え、周囲の環境に応答するための重要な仕組みの一つです。
本研究では、非平衡な化学振動反応によって生じる化学波を、電荷を持つハイドロゲル中に伝播させ、その挙動を調べました。その結果、材料が持つ電荷の違いによって、化学波を遅くするだけでなく、逆に速くすることにも成功しました。さらに、電荷を持つ材料を空間的に配置することで、波が進む方向も変化させることができました。
これは、周囲の環境に応じて情報の伝わり方を変化させる生命系の特徴を、人工材料上で再現・制御するための新しいアプローチです。材料の「電荷」を一種のプログラムとして利用することで、将来的には、人工細胞や生命現象を模倣する材料、自律的に情報を伝達・応答するスマートマテリアルへの展開に加え、生命の発生や形態形成に関わる反応拡散波が、周囲の環境によってどのように制御されるのかを理解するためのモデル系としての活用を予定しています。
【論文タイトル】Charge-Encoded Hydrogels Program Sign-Reversible Belousov−Zhabotinsky Wave Transport