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名物研究室・授業紹介

研究室紹介

生物に学ぶナノテクノロジー

生物物理第3 研究室  【吉村英恭】



 生物が何十億年もかけて改良してきたナノマシン、つまりタンパク質を利用して新しい素材の開発をしています。たとえばフェリチンというタンパク質を使ってナノメートルサイズの小さな球状の磁石や、発光する粒子をつくっています。このような粒子を利用して、半導体の素材や医療に応用することを目指しています。また、細菌はタンパク質でできたスクリューをタンパク質でできたモーターで回転させて泳いでいますが、その性能は人間がつくった装置より優れた性能をもっています。このような素材を調べることで、微小で能率のよい駆動装置ができないか研究しています。タンパク質をつくるのに遺伝子工学などの手法を使い、ナノ粒子を調べるのに電子顕微鏡やX線回折など物理的な手法を使います。

セラミックの新現象や異常物性を探索し、量子ビームでそのメカニズムを解明

量子個体物性研究室  【安井幸夫】

赤外線加熱炉。2100℃まで昇温させることができ、セラミックの大型単結晶を育成させることが出来ます。 超伝導マグネットによる最高9T(テスラ)までの高磁場中において、1.9Kから400Kまでの比熱・磁化率・電気抵抗・ホール係数が全自動で測定できます。

 この研究室ではセラミックの一種である金属酸化物の可能性に注目し、磁性や電気特性に絡んだ現象を中心に、新しい物性現象や異常物性を示す面白い物質を探索しています。物性が未知の物質を取り上げ、まず試薬を混ぜて電気炉で加熱し金属酸化物の多結晶試料や単結晶試料(上図)を合成します。

 次に合成した試料の低温や高温さらには磁場中での磁性・電気特性・誘電特性・熱特性等を測定して新奇で面白い物性を示すものがあるか調べます(下図)。面白い物性を示す物質を発見した際には、X線や中性子線といった量子ビームを利用した実験により、もっと詳しくその試料の物性を調べます。X線レントゲンを使えば体を傷つけることなく体内の様子が分かるように、試料にX線や中性子線を照射して散乱される様子を調べれば、物質内部の様子(原子の動きや原子配列、スピン配列など)を知ることが出来ます。この原子レベルの情報を利用して、発見した新しい物性現象のメカニズムを解明していきます。

 一緒に研究を進める学生達には、自分の力で未知の試料を合成する苦労と喜びを味わい、さらに世界初の実験データを自らの手で測定する興奮を感じて欲しいと思います。

超音波利用の可能性をさらに広げて未来へ

超音波物理研究室  【崔博坤】
 耳で聞こえないほど高い音を、超音波といいます。強い超音波を水中に照射すると微細な気泡ができます。気泡内部は数千度、数百気圧という極限状態になるので、発光や衝撃波の放出、水分解などを生じます。こうした現象は各種産業、化学、医療などさまざまな分野に応用することができます。ゼミでは超音波利用の可能性をさらに広げて、未来へとつなげる研究を目指しています。

授業紹介

物理学、それは自然との対話

物理学実験1~ 4 【崔博坤、立川真樹、平岡和佳子、吉村英恭、菊地淳、鈴木隆行】





 物理学とは自然科学のひとつであり、自然のあらまし、その背後に潜む法則を解明しようとする学問です。自然を対象にするため、自然現象を詳細に観察したり、自然に対してこちらから働きかけた結果を調べたりすることが必要不可欠です。これは自然の声に耳を傾け、こちらから語りかけるという意味で「自然との対話」です。大昔の夜空の星の動きや弦をつまびく音の観測も、現代の最新の測定器やコンピュータを用いた計測も根源的には同じ「自然との対話」です。物理学科の2・3年次では専門的な物理実験を学びます。自転車をこいで人間の仕事率を測る力学的なテーマから、電気回路、放射線、光学、電磁気、熱力学、電子顕微鏡、量子的な実験まで多くの分野のテーマが揃っており、「自然と対話」するさまざまな方法を習得できます。
生物物理学序論 【平岡和佳子】



生物物理は、生命の営みについて、物質科学的な原理と、さまざまな階層構造の原理原則を追求します。この序論では、生命の基本について物理や化学の知識で理解できるところから丁寧に学習を始めます。生命現象を支える生物物理の習得は、医療や情報分野をはじめ、私たち人間を中心としたさまざまなシステム・技術の発展に大きく貢献することでしょう。
熱力学 【光武亜代理】



 「温かさや冷たさとは」、「熱とは」、「熱と仕事の関係は」、など、熱力学では、巨視的系の熱的性質を記述する普遍法則を学びます。また、身近な巨視的体系の具体的な性質や現象を扱いながら、内部エネルギー、エントロピー、自由エネルギーなどの概念を導入し、微視的な立場から巨視的性質を理解する統計力学を学ぶための基礎になります。

社会に役立つ技術を開発するには理学的な考え方が必要不可欠

基礎物理学実験  【鈴木秀彦】





 「基礎物理学実験」は、理工学部の1 年生全員を対象とした必修科目です。この授業では、「体積の測定」「ヤング率と音速の測定」「金属の融点の測定」「電圧、電流、抵抗等の測定」「空気の屈折率の測定」「スペクトル線の測定」といった基本的なテーマを取り上げ、その現象をわかりやすく理解するための実験を行っています。
 たとえば「体積の測定」では、“物差し”の一種である「ノギス」と、「マイクロメータ」を使って、実際に物を測定します。“ 物差し” の使い方というと非常に簡単なことだと思われるかもしれませんが、副尺の読み方、有効数字の扱い方など、器具を正しく使うためにはルールを理解しなければなりません。これを知らないと、物を測定するときに正しい値が出せません。あるテーブルと同じものをつくろうとしても、測定した値が間違っていれば同じものにはならないのです。
 また、視覚的に物理現象に触れることのできる実験もあります。「ヤング率と音速の測定」では、コルクの粉末を敷き詰めて密閉したガラス管を用いた「クントの実験」を行います。この管内の空気を振動させると、空気の振動がコルクの粉末に伝わり、音波の形が現れます。
 このように、各自が実験装置に直接ふれ、測定を行いながら物理の基本を学ぶのが基礎物理学実験の目的です。自分の手で行った「実験」を通じて物理現象を「見て」「体感する」ことは、理系の考え方の根幹を成す非常に大切なことです。ものづくりの現場では、技術職でも営業職でも専門知識があるだけではいい仕事はできません。ものごとの本質、理論を理解してこそいい仕事ができる。基礎物理学実験は、「理学と工学の融合」という概念の土台をつくる授業といっていいでしょう。
理工学部