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理工学部

【理工学部】安井幸夫准教授のグループの論文がNature関連誌「Nature Communications」に掲載されました

2016年03月14日
明治大学 理工学部事務室

 明治大学(理工学部物理学科・安井幸夫准教授)、京都大学、学習院大学、東京大学の研究グループは、スピンアイスと呼ばれる磁性体Yb2Ti2O7について、純良単結晶の熱伝導を磁場下の極低温で調べた結果、この世界には存在しないはずの磁気単極子が実効的に出現し、その磁気単極子が量子ゆらぎの効果を利用して結晶内を特異的に伝搬していくことを発見しました。
 スピンアイスと呼ばれる磁性体では、正四面体の頂点に位置する磁気モーメントが正四面体の内向き(in)か外向き(out)のどちらかを向きますが、隣接する磁気モーメントの間に同じ向きに揃おうとする力(強磁性的な相互作用)が働くので、正四面体の4つの磁気モーメントは2つ内向き、2つ外向きのいわゆる”2-in 2-out”の状態が安定になります。この時、特定の結晶方向に磁場を印加すると、一部の磁気モーメントが反転し、図1(a)に示すような”3-in 1-out”と”1-in 3out”の状態に変化しますが、それぞれ実効的にはN単極子とS単極子に見なせます。磁気モーメントが次々と反転していくと、図1(b)のように磁気単極子が独立に伝搬することができます。さらに本研究で取り上げた磁性体Yb2Ti2O7では量子ゆらぎが強いためにこの伝搬が特異的なものになっていることがわかりました。
 本研究で見出した現象は、絶対温度で約0.3Kという極低温で出現するものなので、すぐさま応用に展開可能な磁性現象ではありませんが、磁性体の新たな性質を引き出したという点で大変重要です。
 
 安井幸夫准教授のコメント
人類が利用可能な元素はわずか数十種類ですが、複数の元素を組み合わせれば無限の種類の化合物を合成することができます。それらの中には特異で面白い性質や、生活を一変させるような画期的な性質をもつ化合物が眠っているので、今後も探索していきたいと思います。

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