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理工学部

【理工学部物理学科】鈴木秀彦准教授らが北海道で3日連続「夜光雲」の観測に成功

2020年06月20日
明治大学 理工学部事務室

 明治大学理工学部 鈴木秀彦准教授らは、地球温暖化と関連があるとされる「夜光雲」を北海道において約5年ぶりに、しかも3日間連続(6/12~14)で観測することに成功しました。地上が温暖化すると上空の大気は寒冷化すると言われており、地球温暖化の進行が夜光雲の出現頻度を増加させると予想されています。
 2015年以降1例も検出がなかった「夜光雲」が突然3日連続で観測されたことは明らかに特異です。その継続時間から2020年6月中旬における上部中間圏領域に地球規模で平年とは異なる変動が起こっている可能性も示唆されます。

鈴木秀彦准教授のコメント
「夜光雲自体は夏の高緯度帯ではよく知られた現象ですが、北海道のような中緯度帯でここまで大規模に確認されることは大変稀です。しかし、それは単にこの時期に夜光雲を地上から観測するために必要な晴天の日が少ないだけで、夜光雲自体はもっと頻繁に発生している可能性もあります。現在、進めている航空機、小型気球、衛星を用いた集中観測プロジェクトにより中緯度帯における夜光雲の出現実態が明らかになると考えています。」

■ポイント(背景と本イベントの特異性)
・夜光雲は地球大気の上部中間圏領域(高度80~90km)に、夏季の高緯度地域(緯度50~60度)で見られる地球で最も高高度に発生する天然の雲である。
・夜光雲の出現頻度や領域は地球温暖化とリンクして変動すると考えられており、当グループでは2015年6月21日に日本で初めて夜光雲を発見して以来、中緯度帯(北海道)での監視を強化・継続してきた。
・2015年6月21日以降、北海道では顕著な観測例のなかった夜光雲が突如2020年6月12日から3日間連続で再び観測された。しかも雲が2016年のイベントよりもさらに低緯度側へ流れてきた(本島上空まで迫った)ことが確認されている。
・2015年以降1例も補足がなかった夜光雲が突然3日連続で観測されたことは明らかに特異である。その継続時間から2020年6月中旬における上部中間圏領域に地球規模で平年とは異なる変動が起こっている可能性も示唆される。一般に超高層大気におけるグローバルな変動は地上気象の変動と密接に関係しているので、現在プロジェクト内でグローバルな視点でその因果関係を調査議論している。

■観測の時系列
・2020年6月12日(金)
【朝方】検出無し(曇天含む)
【夕方】陸別(名古屋大学宇宙地球環境研究所陸別観測所) 名寄(なよろ市立天文台)2点で夜光雲を検出
・2020年6月13日(土)
【朝方】名寄、サロベツ(NICT電波観測施設)、紋別(北大低温研オホーツクスカイタワー流氷カメラ)の3点で夜光雲を検出
【夕方】検出無し(曇天含む)
・2020年6月14日(日)
【朝方】陸別、紋別の2点で夜光雲を検出。特に陸別では1時間程度にわたり夜光雲の連続検出に成功。
【夕方】検出無し(曇天含む)

<夜光雲に関する日本語の文献 >
[1] 村山泰啓(2010)
夜光雲: 地球上で最も高い雲、エアロゾル研究
[2] 鈴木秀彦、西谷望、MTI研究会夜光雲観測グループ
日本初の夜光雲観測 (2017)、名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE) Newsletter, Vol 3

■プロジェクトチーム
基盤研究(B)プロジェクト [衛星-航空機-気球-地上連携観測による中緯度帯における夜光雲発生メカニズムの解明]、中緯度夜光雲観測プロジェクト(研究課題番号:19H01956)]
明治大学:地球惑星大気物理研究室:鈴木秀彦(准教授)、中村優里子、遠藤哲歩(明治大学大学院理工学研究科)、名古屋大学:西谷望、北海道大学名誉教授:藤吉康志、紋別市役所/北海道大学大学院水産科学研究院:岩本勉之、 電気通信大学:津田卓雄、穂積裕太、高知工業高等専門学校:高田拓、駒澤大学:坂野井和代、情報通信研究機構(NICT):村山泰啓、坂口歌織、小川忠彦

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