データ化学工学研究室(金子弘昌専任教授主宰)から発表された論文が、国際学術雑誌 ACS Applied Polymer Materials における Volume 7, Issue 22 (2025) の表紙絵を飾りました。
本研究は、医薬品などの製造に不可欠な「鈴木・宮浦型クロスカップリング反応」において、高価なパラジウムの代わりに、安価な「ニッケル」を用いた高性能な高分子触媒を、機械学習を駆使して開発したものです。従来、ニッケル触媒の実用化には、反応を阻害しうる「添加剤」が多量に必要という課題がありました 。そこで触媒の構造や実験データから反応効率(収率)を予測するAIモデルを構築し、実験と解析を繰り返す「ベイズ最適化」という手法を取り入れました。その結果、これまで未探索だった新しい構造を持つ高分子ニッケル触媒を設計し、従来よりも「極めて少ない添加剤の量」で、高い収率を達成することに成功しました。この成果は、希少資源の節約や環境負荷の低減に貢献するだけでなく、経験則に頼りがちだった触媒開発におけるデータ科学の有効性を実証しました。