建築は、人間の原始から続く芸術であり技術です。特に人の住む「住宅」は建築の基本形ですが、この中に建築学のすべてのエッセンスがあります。まず雨露を防ぐためには屋根や壁が必要であり、そのためには地震にも耐えられる構造工学の考え方や、何で造るかといった材料や工法の知識も必要です。そして人が生活することを考えた場合、暑さ寒さのコントロール、トイレ、風呂などの給排水、照明、音などといった環境や設備工学の知識も必要となります。しかし、それだけではまだ足りません。家族のような集団がどのような大きさの空間をどう使うかといった計画学の知識も必要です。またラスコーの洞窟絵画のように、人間は古代から自分の生活空間の中に文化や芸術的感覚を必要としてきました。家具やインテリア、建物の外観イメージなどを扱う意匠学、歴史を扱う建築史、町並みや都市、地球環境の知識も必要となります。
このように建築学の分野は大変幅広く多様なものです。もし自分が建物を設計したいと考えた時には、どれ一つとして不必要な知識はなく、単に実学だけでなく、幅広い知識と教養を培う必要があります。