無機結晶化学研究室(我田元専任准教授主宰)とデータ化学工学研究室(金子弘昌専任准教授主宰)の共同研究の成果として発表された論文が、国際学術雑誌 Industrial & Engineering Chemistry Research における Volume 64, Issue 12 (2025) の表紙絵を飾りました。
本研究ではLaFeO3結晶材料を対象にして、所望の物性を持つ材料を合成するための実験条件をベイズ最適化で設計し、実際の材料の合成に成功しました。まず、実験計画法に基づいて最初の実験条件の候補を決定します。その実験条件でLaFeO3結晶材料を合成し、物性を分析します。得られたデータセットを用いて、実験条件を説明変数、物性を目的変数としてガウス過程回帰モデルを構築し、まだ実験していない実験条件の候補をモデルに入力することで物性を予測するとともに獲得関数を計算します。獲得関数の値の大きい実験条件の候補を選択し、それに基づいてLaFeO3結晶材料を合成し、物性を分析します。モデルの構築、次の実験条件の提案、実験を繰り返すことで、所望の物性をもつLaFeO3結晶材料の合成を目指します。3つのケーススタディを行ったところ、少ない実験回数で小さい結晶子サイズを持つLaFeO3結晶材料を合成することに成功しました。さらに、生成物のX線回折パターンから不純物の有無を評価する指標を目的変数として追加し、多目的最適化することで、不純物の生成の抑制と結晶子サイズの縮小を同時に達成しました。